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海賊アデリーナ編入間近記念小説

通学途中に気晴らしに書いていたのが完成したので、公開しちゃいます。
 気分を害する表現があるかもしれませんので、読むときは気をつけてください。

それではどうそ

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 コインブラというこの大陸随一の港町に、腕利きの刀鍛冶がいるのは、開拓者の間ではちょっとした常識であった。

 日が海を焦がす夕暮れ、そんな鍛冶屋の戸を、まだ幼さが残る青年がくぐった。

「へぇ、あんたが正面の扉から来るなんてねぇ…」

 多少驚きを含んだ声を上げたのは、この店の主人たる隻眼の女主人であった。名はアデリーナ、昔は海賊であったといわれている。

「気付いていたのですね。」

青年は後ろ手で扉を閉めると、女主人には近づかずにその場で対峙した。彼女を殺すため、何度も背後に立った。だが今日は手ぶらであった。

「私を殺しに来たんだろ?武器が欲しけりゃ壁にあるのを好きに使うがいい。」

 アデリーナは手に持った刀に水を掛け、砥石で研く作業を再開した。

「なぜ…父を殺した?」

 重い沈黙の後、青年は口を開いた。

「…さぁてねぇ…忘れちまったよ。沢山人を斬ってきたから…」
「嘘を言うな!いろんな人に話を聞いた!やっと口を開いたと思えば皆が口を揃えて父は裏切り者だと言う!母さえも!教えろ!父は裏切り者なのか!」

 激高する青年に、アデリーナは手を止めた。俯いていて青年には見えなかったが、彼女の瞳は黒く光っていた。

「裏切りが本当だとしたら、あんたはどうするんだい?」
「聞いてから決める。ただ今は真実が知りたい。」

 アデリーナはしばらく自分の磨いた刀身を眺め、水を掛けると再び研ぎ始めた。

「海賊ドスパレスと言えばそれなりに名の知れた海賊だったさ。私はそいつらの船長でねぇ、皆が家族みたいなものだったさ…」

 アデリーナは静かに口を開いた。



「うぐぇ…」
「姐御!アデの姐御ぉ!!!」

 甲板で嘔吐し倒れ込んだアデリーナに、泣く子も黙る海賊船は上へ下への大騒ぎとなった。

 船医が呼ばれ、船長室に運び込まれたアデリーナに船員みんなが張り付いて心配した。

「アデの姐御、どうしてこんなになるまで放置したんすか。」

 毛むくじゃらの船医は診察を終えると、ことさら深刻そうに切り出した。

「フェルナンデス!」

 そんな船医に呼ばれたのは、彼女の夫フェルナンデス。幾多もの荒れた海と海戦をくぐり抜けた男だが、この医師の目にはたじろいだ。

 誰もが息を飲む空間で、船医が突然不気味なほど笑顔になった。

「おめでたですよ。」

 一息間が空いた後、船が飛び上がらんばかりに歓声が上がった。船長の懐妊を誰もが我が事のように喜んだ。




「貴女には子供がいたのですか…」
「……ギレルモって奴が船にいてねぇ、戦いになると残忍で、財宝に異常な執着を見せたけど、いろいろ鼻が効いて、独自の情報網も持っていて、ずいぶん助けられたのさ。」
「そいつの名は聞いた、父を裏切りに巻き込んだ男…」
「そう、あんたの親父、バルディはあいつの部下だった。」

 裏切り者の話になってもアデリーナの声色は変わらなかった。だがそこに深く暗い感情が流れているのを、青年は感じ取った。




 ギレルモは前の寄港地でけっこうな借金をこさえたらしいが、誰にも打ち明けなかった。少し雰囲気が変わっていおり、何かを隠しているようだったが、いつもそんな感じだったから誰も咎めなかった。

 だがアデリーナが妊娠し、船に乗せておくと危険とした船医の指示の元、急遽ベスパニョーラ港への寄港が決まってから、奴はずいぶん明るくなった。

 ギレルモには二人の部下がいた。ヴィニットは食べる事に関して右に出るものはいない大食漢、バルディは気が小さいが誠実な男だった。




「なぜあの二人がギレルモに加担したかは想像するしかない。うちの海賊はそれなりに活躍してて、その懸賞金は新品の船が余裕で買えるほどだったさ。ギレルモはそれに目が眩み、ヴィニットは唆されやすい単純な男だったからな…」
「親父は…」
「バルディは…すでにあんたの母親と付き合っていたんだよ。場末の娼館で働く娘でね、日々客をとらなきゃいけないんだけど、時期的にあんたを身篭ったんだろう。個人的なことは多く語らなかったけど、思い悩んでいたようだ。ギレルモにはそこに付け込まれたんだろう。」
「俺のために…」
「よく晴れた日だったよ、あの日は…」




 人当たりのいい年長の船員、リカルドが、一軒の宿を押さえてくれた。下が酒場の部屋からは港が一望でき、出港準備をする自分達の船を見ることができた。

 急に港のざわめきが変わった。いつも騒がしいが、アデリーナの経験から警戒心を書き立てられた。

 ほどなくして騒ぎの原因が視界に入る。軍だ。

(フェルナンデス、逃げて!)

 期待を裏切るように大挙して押し寄せる軍は人々を掻き分けてドスパレスに向けて真っ直ぐに進んだ。

(なんで?)

 そしてその原因を見つける。軍の指揮官の横に、そいつがいた。

(ギ…ギレルモ…)
「アデリーナ!逃げるぞ!軍がお前を探してる!」

 部屋に入って来たリカルドは窓に張り付いてるアデリーナを引きはがすと、有無を言わさず引っ張った。

「リカルド!私達の船が!」
「今は生きるのです!」

 壁に立て掛けてあるアデリーナの曲刀をとり、彼女に押し付けると、手を引いて早足に部屋を出る。

 廊下には宿の男が立っていて、リカルドを確認すると裏口へと導いた。

 街の裏道は表よりも人通りが少ないが、吹き溜まりの腐った連中がたむろしていた。その間を走り抜ける男女は、自然と目立ってしまった。

「ちょっと待ちな。ここ通るには通行税が必要だぜ。」

 薄汚いチンピラが道を塞いだ。前に四人、後ろから三人。

「どきたまえ、悪戯が過ぎると痛い目を見るぜ。」

 リカルドが悠然と身構えたが、この言葉で引いてくれるとは考えていなかった。

「嘗めやがって!」
「こいつ、軍が探してる女海賊じゃね?!」
「儲かるぞ!やっちまえ!」

 襲い掛かってくるクズ連中。リカルドは曲刀を抜いて身構える。しかし彼には誤算があった。後ろのアデリーナは顔面蒼白で、汗を吹き出しながら苦痛で息を上げていたのだ。

 それでも長年の戦士の血が彼女を動かす。うずくまりながら最初に近づいた一人の胸板を回転しながら貫く。二人目の攻撃を掠りながらかわしてそいつの首を切り裂く。

(あと一人…)

 朦朧とする意志を懸命に堪えて見えたのは、飛んでくるナイフ。

「がぁあ!」
「アデリーナ!」

 前の四人を制圧したリカルドが見たのは、顔面にナイフを生やしたアデリーナだった。その手は腰の銃に延びており、次の瞬間三人目は絶命した。

「ぅぐ…」
「よせ!」

 リカルドの制止をよそに、アデリーナは震える手で力任せにナイフを引き抜いた。右目の眼球が、串刺しになったまま取り出された。

「行こう、アデリーナ。銃声で奴らが来る。」

 リカルドは肩を貸して彼女を立たせ、進み始めたの朦朧とし視野も揺らぎながら、彼女は意志の力だけでついていった。


 窮地な状況でも手を貸す友人がいるというのが、リカルドの誠実さと顔の広さを物語っていた。二人はもぐりの煙草屋に逃げ込んだ。

 提供されたベットに横たわらせたとき、アデリーナは最悪の状況になっていた。気力だけで動いていた体は激しく痙攣し、意識は宙をさ迷っていた。左目は白目を向き、右目からは大量に出血し顔半分を赤く染めていた。全身から汗を吹き出し、ランプの下の彼女を輝かせた。

 リカルドが右目の止血を試みたが、アデリーナの激しい痙攣で手間取り、結局たばこ屋の主人とその妻の手を借りなければならなかった。





「暗くなっちまったねぇ…」

 いつの間にかあたりは暗闇に包まれ、アデリーナは立ち上がり、マッチを探してランプに火を入れた。

 ぼんやりした光のもと、俯いた青年と女鍛冶屋が浮かび上がる。

「私が意識取り戻すと、医者らしき男の言葉が聞こえたんだよ。母体だけでも救えたのが不幸中の幸いだってね。」
「…」

 青年は俯いたまま何も反応しなかった。

「私が、私の子がどうかしたのかって聞いたけど、誰も答えてくれなかったよ。結局あの日に船も、仲間も、恋人も、子供も、私は失っちまったんだよ。」

 アデリーナは曲刀に柄をつけ鞘にしまうと、壁にかけた。そして少し迷って一振りの長剣を手に取り、元の場所に戻った。

「泣くことすらできなくてね、ただ呆然とした心に唯一残ったのは、暗くて黒い憎しみだけだったのさ…
おや、あんた泣いてるのかい。」

 青年は言われて初めて自分が涙を流していることに気がついた。

「やめておくれよ、同情なんて…」
「…私の知っている父は、何かに怯えているようだった。がむしゃらに働いて、ぼろぼろになっていた。子供の私の目には、それがすごく怖かった…その正体がわかった気がします。」
「…」

 アデリーナは手にした長剣を抜き、手入れを始めた。

「父は…裏切った自分自身に怯えていた…父を殺されたのは憎いけど、殺したのもまた父自身なんでしょう…」
「…私の言うことを信じるのかい?」
「あなたは逃げなかった。私の前に堂々と身を晒した。あなたは人殺しの罪を知っている。罪とわかっていながら父を殺した理由を、私は疑わない。もう終わったんです。もう誰も憎しみだけで人を殺してほしくない…」
「とんだお人よしだねぇ…」

 アデリーナは長剣を鞘に納めると、それを眺めて口を開く。

「あんた、親父を追ってコインブラ兵になるんだって?」
「あぁ…」
「持ってお行き。」

 アデリーナは手にした剣を青年に投げた。

「アロンダイト、剣士の実力を正直に出してくれるバランスのとれた剣だ。持っといて損はないだろ。」
「しかし…」
「さ、話は終りだよ。用が無いなら出ていっておくれ。あまり母親を心配させるもんじゃないよ。」

 青年は残ることを諦めて、頭を下げて戸を開けた。

「アデリーナさん。」
「あん?」
「また来ていいですか?父について私はほとんど知らない。もっと知りたいんです。」

 アデリーナは苦笑した。

「好きにしな。ただあいつの武勇伝はかなりある、長い話になるよ。」
「はい!」




(私の子が育っていれば、あのくらいか…)

 静まった店内で、アデリーナは青年の消えた戸を見つめていた。左ほほを、冷たい何かが通り、左手の上に落ちた。

「ふふ、枯れたとばかり思っていたのにねぇ…」

 ランタンの下で、彼女は静かに泣いた。



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お気づきかもしれませんがアデリーナクエストの十数年後の話です。
一応補足しておきます^^;
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No title

お久しぶりです!
とってもステキなお話だったので、思わずコメントしてしまいました。
バルディの息子がクエストに出て来たときから、いつか復讐の連鎖が・・・
なんていうストーリーを思い描いていたので、今回の小説はイメージどおりでした。
これからも頑張ってください!(また遊びに来てくださいね!)

No title

おぉぉぉ!virgin家のemilia様からコメントをいただけるなんて光栄の極みです!
ありがとうございます!

アデリーナというキャラは好きですが、復讐や憎しみの連鎖が背後にあるのが悲しいんですよね。身勝手ながらそれを断ち切ってしまったのです。

ただ、この小説の通りになるためには、バルディの妻の教育が良かったという前提が必要だなぁと思ったりw

virgin家様にはほぼ毎日遊びに行ってます!
いつも楽しませていただいてます!
この場を借りて御礼申し上げます!

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